日本心臓血管外科学会雑誌
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[先天性疾患]
右房・無名静脈バイパスが開存していた Glenn 手術原法・ Björk 手術後遠隔期の蛋白漏出性胃腸症に対し TCPC 転換術を施行した1例
白石 修一杉本 愛土田 正則
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2020 年 49 巻 5 号 p. 257-260

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抄録

症例は37歳男性.三尖弁閉鎖の診断で左Blalock Taussigシャント手術原法,Glenn手術原法,左肺動脈形成術の既往あり.10歳時にBjörk手術を施行したが,術後に循環不全となり心肺補助装置を装着された.上下大静脈間の著明な圧較差を認めたため,人工血管による右房・無名静脈バイパス術を追加し心肺補助装置を離脱し得た.術後他院にて経過観察されていたが,30歳頃より心房頻拍が出現,36歳時より蛋白漏出性胃腸症を発症した.内科的治療でも改善を認めないため当院再診した.心臓カテーテル検査にて右房・無名静脈間の人工血管の開存が確認され,左肺動脈が低形成のため下大静脈血流は一部が人工血管経由に無名静脈から右肺動脈へ還流しており,上下大静脈間の圧較差を認めた.手術は人工心肺・心停止下に右房アブレーション,心外導管を用いたTCPC転換術,大動脈前方での左肺動脈再建,右房-心外導管間のfenestration作成および心外膜ペースメーカーリード装着術を行った.術後34日に退院した.蛋白漏出性胃腸症は軽快し3年経過した現在も再発は認めていない.

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