日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
超音波外科吸引装置(CUSA)を用いた石灰除去によって改善した高度僧帽弁輪石灰化を伴う僧帽弁狭窄症の1例
成宮 悠仁吉田 英生大島 祐岸 良匡横山 昌平吉田 賢司佐伯 宗弘立石 篤史柚木 継二久持 邦和
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2020 年 49 巻 5 号 p. 275-279

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抄録

僧帽弁輪石灰化(mitral annular calcification ; MAC)を伴う症例に対する僧帽弁手術では,通常の僧帽弁手術に比べて合併症リスクが高い.今回われわれは石灰除去のみで弁機能が改善し,弁置換を回避できた症例を経験したので報告する.症例は82歳の男性で,眼瞼浮腫と呼吸苦を契機に大動脈弁狭窄症(AS)と高度なMACを伴う僧帽弁狭窄症(MS)と診断された.僧帽弁置換術はリスクが高く,弁形成を試みる方針とした.僧帽弁前交連に交連切開を加えた後,超音波外科吸引装置(CUSA)を用いて前交連弁輪石灰除去を追加し,さらに大動脈弁切除後に大動脈弁口より僧帽弁前尖左室側の石灰除去を行った.大動脈弁置換術を行った後,経食道心エコー検査でMSが改善していることを確認した.術後検査でも僧帽弁圧較差の改善と弁口面積の拡大を認め,僧帽弁逆流は軽度であった.術後2年を経過して,MSの再発を認めていない.MACを伴う僧帽弁疾患の中には石灰化除去により弁形成を行うことができる症例もあり,本術式により,複雑な手技を要すことなく弁置換に伴う合併症を避けられる可能性がある.

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