2021 年 50 巻 3 号 p. 170-173
症例は67歳男性.感染性心内膜炎による大動脈閉鎖不全症に対して,25歳時に機械弁Björk-Shiley Spherical(BSS) 弁にて大動脈弁置換術,および基部大動脈パッチ拡大術を施行されており,今回基部大動脈が73 mmに拡大したため手術治療となった.胸骨再正中切開にてアプローチし,人工弁を確認したところ血栓やパンヌスは認めず,構造的にも異常を認めず良好に機能していた.しかし今後の経年劣化によるトラブルが起きる可能性も否定できず,BSS弁は摘出し24 mm機械弁を用いたcomposite graftによる基部置換術を行った.BSS弁の長期報告は非常に少なく,本症例は植え込みから42年以上経過後もBSS弁は良好に機能していたが,予防的交換の是非の判断は困難である.患者背景や年齢,術式に応じた総合的な判断が望ましい.