2022 年 51 巻 1 号 p. 16-20
症例は57歳男性,1カ月前からの呼吸苦を主訴に来院,肺塞栓の診断に至り,心エコーで右房内血栓を認めたため,当科紹介となった.経胸壁心臓超音波検査では,右房内に可動性を有する数本の線状巨大血栓と両側肺動脈主幹部に塞栓所見を認めたため,緊急血栓除去術を施行した.人工心肺下心拍動下に右房切開と右肺動脈切開および主肺動脈から左肺動脈に至る切開を施行し,可視範囲内の血栓をすべて除去した.右房内血栓は線状のキアリ網に付着していた.術後は呼吸循環動態が改善し,術後26日目に独歩退院となった.キアリ網が右房内血栓形成,または血栓増悪に関与し肺塞栓を合併したとの報告は少なく,治療法も確立されていない.今回,キアリ網に血栓が付着し,可動性を有する右房内血栓と肺塞栓を発症し,血栓除去術により呼吸循環動態を改善し得た症例を経験したので報告する.