2022 年 51 巻 1 号 p. 21-24
症例は75歳,男性.生下時より右胸心,完全内臓逆位を指摘されていた.2019年9月,労作時の前胸部不快感,左背部痛を自覚し,当院救急外来を受診.血液検査で軽度の心筋逸脱酵素の上昇,心電図検査でⅠ,aVL,V4-V6のT波の平坦化を認めた.冠動脈造影検査を施行したところ,解剖学的左冠動脈前下行枝および解剖学的右冠動脈に有意狭窄を認めた.解剖学的左冠動脈は広範囲な石灰化病変を含む完全閉塞病変であったため,経皮的冠動脈形成術(PCI)は困難と判断し,冠動脈バイパス術の適応と判断した.体外循環心拍動下に冠動脈バイパス術(右内胸動脈-解剖学的左冠動脈前下行枝,大伏在静脈-解剖学的右冠動脈後下行枝)を施行した.完全内臓逆位に対する冠動脈バイパス術は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告する.