2022 年 51 巻 2 号 p. 73-79
[目的]上行大動脈病変のために大動脈遮断を回避し,超低体温循環停止下での上行大動脈置換術を併施した大動脈弁置換術(AVR)症例を,大動脈遮断が可能であった症例と比較,検討する.[方法]2010年4月から2019年7月に施行した133例を対象とした.術前CTおよび術中epi aortic ultrasoundにて大動脈遮断の可否を判断した.上行大動脈置換併施症例(Asc-AVR)が12例,大動脈遮断症例(C-AVR)が121例であった.Asc-AVR群では,超低体温循環停止,逆行性脳灌流を基本脳保護として,上行大動脈を人工血管で置換し,送血再開後,人工血管を遮断して心内操作を施行した.[結果]Asc-AVR群で,手術時間,体外循環時間,輸血量が増加した.JapanSCOREの予測死亡率+主要合併症発症率(p=0.007),脳梗塞発症率(p<0.001)はAsc-AVR群で有意に高率であったが,両群の入院死亡,術後合併症等に有意差は認めず,Asc-AVR群で画像上の微小梗塞を2例認めたが,症候性脳梗塞は認めなかった(p=1.000).5年生存率はAsc-AVR群64.2%,C-AVR群79.9%で(p=0.420),遠隔期死亡と上行置換の有無に関連は認めなかった(p=0.738).[結論]術前精査に基づく超低体温循環停止下での上行大動脈置換併用法は,上行大動脈病変を有する大動脈弁狭窄症例に対する積極的なアプローチ法として,有用であると考えられる.