日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
Standard precaution として行う術中対策を通じてのハイリスク症例に対する SSI 予防
田口 真吾, 花井 信, 山﨑 真敬, 墨 誠, 百川 文健
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2022 年 51 巻 2 号 p. 80-88

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抄録

[背景]重症糖尿病や透析,長時間手術等が手術部位感染(SSI)の危険因子と考えられるが,危険因子のない症例でもSSIを発症し得ることからstandard precautionとして全症例に等しくSSI予防を行うことがハイリスク症例でのSSI予防に繋がると思われる.われわれは開心術で最も多いSSIである縦隔炎に注目し,縦隔炎は表在菌により術中に胸骨骨髄が汚染され,その後に深部骨髄や縦隔内へと感染が波及した病態であると仮定し,この仮定に基づいて行った術中感染対策による縦隔炎の予防効果を検討した.[方法]2011年4月より2016年7月までに施行した開心術症例658例を対象とした.これらの症例を胸骨切開後に鈎部分のみスポンジで被覆した開胸器をかけた406例(C群)と,胸骨離断面を酸化セルロース止血剤と帯状に折った薄タオルで二重に被覆し,さらに正中創上下縁の皮下死腔に薄タオルの余剰部分を充填して開胸器をかけた252例(S群)に分類した.縦隔炎の危険因子は糖尿病(HbA1c 7.5以上),腎不全(Cr 2以上),喫煙,肥満(BMI 30以上),再手術,緊急・準緊急手術,術前挿管,長時間手術(8時間以上),再開胸止血術,冠動脈バイパス術(CABG)の10因子を想定し,統計学的に分析した.[結果]本検討での有意な危険因子は緊急手術とCABGであったが,危険因子がない症例も1例認めた.縦隔炎発症に関して,単変量解析ではCABG,当手技の有無,手術死亡および縦隔炎(DSI)に対するJapanScore-IIにおいて統計的有意差を認めた.多変量解析では,再開胸止血術,CABG,大動脈疾患,複数の危険因子,JapanSCORE-IIにおけるDSIが縦隔炎発症の危険性を高めたが,いずれも有意差は認めなかった.縦隔炎発症を13例(2.0%)に認めたが,すべてC群での発症であり,傾向スコアマッチングによる検討も含めて当手技により縦隔炎発症率は有意に低下した(p<0.05).[結語]胸骨離断面を厳重に被覆し表在菌の曝露から遮断する基本的手技を術中に徹底することで,開心術後縦隔炎の発症率を有意に低下させることが可能であった.

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