2022 年 51 巻 3 号 p. 147-150
症例は52歳男性.2週間前から続く労作時呼吸困難を主訴に近医を受診し,心不全の診断で当院に入院加療となった.冠動脈造影検査で3枝病変を,左室造影検査では左室下壁の心室瘤から右室へのシャント血流を認めた.心筋梗塞の発症時期は不明だが,陳旧性心筋梗塞後左室瘤の右室穿孔による心不全と診断した.内科的治療にて心不全症状が軽減した後に手術を行った.手術は心室瘤を切開し左室の欠損孔をパッチで閉鎖し,右室への交通部分も含めて瘤切開部を縫合閉鎖した.また,冠動脈バイパス術(内胸動脈-左前下行枝,橈骨動脈-対角枝,大伏在静脈-右冠動脈)も行った.術後の心臓カテーテル検査で瘤の閉鎖とシャントの消失,バイパスグラフトの開存を確認し,軽快退院となった.左室瘤壁の病理所見は偽性仮性心室瘤の診断であった.