2022 年 51 巻 5 号 p. 274-279
心臓原発悪性腫瘍は非常に稀であり,その予後はきわめて不良である.症例は45歳女性で呼吸困難,全身浮腫が急性発症した.心エコー検査で左心房内を占拠する腫瘍および僧帽弁と三尖弁の逆流を認めた.高度心不全を合併していたため準緊急下に腫瘍切除,僧帽弁形成術,三尖弁弁輪縫縮術を行った.病理検査で心臓内膜肉腫と診断され,pazopanib投与による化学療法を行った.手術後1年5カ月で再発腫瘍切除術,僧帽弁置換術,僧帽弁弁輪再建術を施行したが,広範囲直接浸潤をきたし初回手術後2年1カ月で死亡された.比較的長期生存を得た,左心房原発心臓内膜肉腫の手術例を経験したので報告する.