日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
重症右心不全に肝硬変を合併した三尖弁および僧帽弁閉鎖不全症に対し,二弁形成術を施行した1例
田口 真吾成瀬 瞳田中 圭
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2023 年 52 巻 2 号 p. 98-102

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抄録

症例は71歳,女性.完全房室ブロックに対して38年前に他院循環器内科でペースメーカー(VVI)植え込み術を施行され,時期は不明であるが経過中に心房細動に移行した.1年前にうっ血性心不全が悪化したため入院加療を行い,退院後は近医に紹介となった.しかし,息切れや下腿浮腫は持続し経口利尿薬を増量して対応していたが,治療に難渋するようになったために当科に紹介となった.心エコー検査で重度三尖弁閉鎖不全症(TR)および中等度僧帽弁閉鎖不全症を指摘され,腎機能低下およびChild分類Aの肝硬変も合併しているため入院加療となった.心臓悪液質を疑う腹水貯留を伴う低栄養状態もあり,強心薬の点滴および中心静脈栄養による術前管理を行った後,入院継続のままで三尖弁形成術および僧帽弁形成術を施行した.術後管理に難渋したが,自宅退院となった.TRによる右心不全は内科治療に反応するが,右心不全が重症化し腎機能低下やうっ血肝による肝障害が出現してから手術介入となった症例では手術術式に比較して術後管理に難渋し文献上から成績もけっして良好とは言えない.慢性心房細動に合併した重度TRのように手術適応となる左心系弁膜症を伴わない症例では右心不全が重篤となる前に外科医が関与し,症例によってはガイドラインよりも踏み込んだ早期の手術を検討すべきであると考える.

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