2023 年 52 巻 2 号 p. 103-108
急性大動脈解離の分枝灌流異常の1つに脊髄虚血があるがその治療法は確立されていない.今回われわれは脊髄虚血を合併したStanford A型急性大動脈解離に対して集学的治療が奏功した3例を経験したので報告する.症例1: 55歳男性,不全対麻痺で発症したStanford A型急性大動脈解離,偽腔閉塞型.心タンポナーデを合併しており緊急的に上行大動脈置換術を施行した.術後3時間で覚醒を確認,不全対麻痺は改善なく集学的治療(脳脊髄液ドレナージ,ナロキソン投与,ステロイパルス療法)を施行し不全対麻痺は完全に改善し第32病日に独歩で退院した.症例2: 50歳女性,左下肢完全麻痺で発症したStanford A型急性大動脈解離,偽腔開存型.緊急的に上行大動脈置換術を施行した.術後2時間で覚醒を確認,左下肢完全麻痺は改善なく集学的治療(脳脊髄液ドレナージ,ナロキソン投与,ステロイパルス療法)を施行し左下肢麻痺は部分的に改善し第57病日装具歩行で退院した.症例3: 43歳男性,左下肢不全麻痺で発症したStanford A型急性大動脈解離,偽腔閉塞型.循環動態は安定しており保存的治療で開始した.同時に集学的治療(脳脊髄液ドレナージ,ナロキソン投与,ステロイパルス療法)を施行し左下肢不全麻痺は完全に改善して第46病日独歩で退院した.脊髄虚血症状を合併したStanford A型急性大動脈解離に対しては救命に加えて脊髄梗塞症状の改善のために,緊急的手術を含めた集学的治療の治療戦略が重要となる.