2023 年 52 巻 5 号 p. 293-298
[背景]心嚢液の貯留はさまざまな原疾患による臨床所見であり,薬物治療で効果が得られない場合や心タンポナーデをきたす場合には外科的なドレナージが推奨される.外科的ドレナージは,開胸・開腹によるもの,胸腔鏡・腹腔鏡によるもの,剣状突起下アプローチなどさまざまな報告がある.[目的]われわれは難治性心嚢液に対して局所麻酔下で剣状突起下アプローチによる心膜腹膜開窓術を選択してきたが,その成績について報告する.[対象]2011年4月から2022年6月までに難治性心嚢液に対して心膜腹膜開窓術を施行した5例を対象とした.年齢は61±14歳,男性が2例(40%)であった.併存疾患は自己免疫性疾患が4例 (全身性エリテマトーデス1例,強皮症2例,IgG4関連疾患1例) (80%),濾胞性リンパ腫が2例(40%)であった.併存疾患に対してステロイドが2例(40%),免疫抑制剤が4例(80%)に投与されており,心嚢液の治療目的にコルヒチンが3例(60%)に投与されていた.開窓術の前に心嚢穿刺ドレナージが4例(80%)に施行されていた.[手術方法] 仰臥位にて,局所麻酔下に胸骨下縁の皮膚を切開し,剣状突起を切除した.径40 mm以上の心膜腹膜開窓をおいた.以前は横隔膜面の開窓のみであったが,最近は横隔膜面の開窓と連続した心嚢膜前面を切除し心嚢を開放している.[結果]手術時間は36±15分であった.合併症は1例で術後出血を認めた.手術死亡,入院死亡は認めなかった.術前投与していたコルヒチンは術後全例中止することができた.術後の平均フォロー期間は2.7年(0.5~5.9年)で,全例で心嚢液の再貯留を認めなかった.[結語]剣状突起下アプローチ心膜腹膜開窓術は,局所麻酔下でも安全に施行することができ,十分な大きさで開窓することで難治性心嚢液に対する低侵襲かつ有効な治療法となると考える.