2023 年 52 巻 5 号 p. 310-313
症例は70歳女性.急性肺塞栓にて前医救急搬送され治療されたが,入院中の経胸壁心エコーにて大動脈弁無冠尖に紐状構造物を指摘され,乳頭状弾性線維腫の疑いで当院紹介となった.術前評価では大動脈弁に機能異常を認めなかったため腫瘍切除のみの予定であったが,術中所見として術前に指摘されていた構造物のほかに,無冠尖・左冠尖の弁尖に細かな異常な毛羽立ちが多発しており,大動脈弁内に固着した腫瘍多発が疑われたため大動脈弁温存は不可能と判断し大動脈弁置換術を施行した.生理食塩水に浸したところ腫瘍はイソギンチャク様の特徴的な形態を示した.他部位に認めた毛羽立ちも花冠状に広がった所見であった.病理診断は肉眼的に正常と思われた右冠尖を含めた大動脈弁三尖すべてに乳頭状弾性線維腫の所見を認め,同腫瘍の多発と確定診断を得た.左冠尖,および無冠尖の副病変に関しては後方視的にエコー画像を評価しても発見は困難であり,手術時の細部にわたる肉眼的観察が非常に重要であった.また腫瘍多発を疑った場合,正常と思われる弁尖にも不顕性に腫瘍が存在することもあり注意が必要である.