日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告[成人心臓]
活動期感染性心内膜炎に対して1枚の舟型ウシ心のう膜パッチを用いてCommando手術を行った1例
工藤 雅文片岡 剛白神 幸太郎
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2023 年 52 巻 5 号 p. 314-319

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抄録

症例は82歳,男性.発熱と平衡障害を主訴に救急外来を受診した.頭部MRI検査で微小出血を伴う急性期多発脳梗塞と診断され入院となった.血液検査で炎症反応の上昇を認め,血液培養検査でStreptococcus oralisを検出した.経食道心臓超音波検査で僧帽弁前尖弁輪部に13×11 mmの疣腫を認めたが,弁間線維体への明らかな波及は認めなかった.中等度の僧帽弁閉鎖不全症と軽度から中等度の大動脈弁閉鎖不全症を認めた.早期手術介入が考慮されたが予測手術死亡率が高く,内科的治療を先行させる方針とした.入院12日目に再度経食道心臓超音波検査を行った結果,疣腫は弁間線維体を経て,大動脈弁輪までの進展を認めた.大動脈弁閉鎖不全症は中等度に増悪した.内科的治療では感染性心内膜炎の制御は困難であると判断し,準緊急で手術を行った.右側左房切開でアプローチし,僧帽弁前弁中央部から前尖弁輪部にかけて疣腫を認めた.僧帽弁輪の温存は困難であると判断しManouguianの切開に準じたCommando手術で大動脈弁輪,弁間線維体,僧帽弁輪に広がる感染巣を完全除去することができた.除去した構造物を1枚の舟型ウシ心のう膜パッチを用いて補填し,新たな弁間線維体を作製して二弁置換術を行った.感染性心内膜炎の再発を認めず,術後34日目に自宅退院となった.術後1年経過し,経胸壁心臓超音波検査で感染性心内膜炎の再発は認めず,両人工弁の弁周囲逆流も認めていない.

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