2023 年 52 巻 5 号 p. 340-344
症例は81歳男性.79歳時にB型大動脈解離に対し,ステントグラフト(SG)留置術を施行された.術後偽腔は縮小し,経過良好であった.術後2年半後に背部皮下腫瘤切除を施行され,その2週間後にMRSA敗血症をきたした.CT上SG周囲にairを伴う軟部陰影の増大を認めSG感染と診断された.SG抜去,in-situでの下行大動脈置換術の予定で臨んだが,瘤への高度肺癒着と片肺換気での酸素化維持困難のため,瘤切開,膿瘍ドレナージのみを行った.瘤内の持続洗浄とドレナージ,抗生剤投与を継続したが,感染兆候は改善せず,術後6日目に肺癒着部の動脈瘤を放置し,遠位弓部から肺門部前面を通し,腹部大動脈に吻合する非解剖学的バイパスを施行した.SGはすべて摘出し,大動脈瘤内の膿瘍,内膜を極力切除し,残存瘤内に大網を充填した.術後速やかに感染徴候は改善し,52病日に退院となった.幸い術後2年間は感染の再燃なく経過している.In-situでの下行大動脈置換が困難なステントグラフト感染に対し,本術式は外科的再建術のオプションとして有用とであると考えられる.