日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告 [成人心臓]
術前診断困難であった限局性Valsalva洞解離による急性大動脈弁閉鎖不全症の1例
野坂 裕野 宏成加藤 寛城
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2024 年 53 巻 3 号 p. 109-113

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抄録

急性大動脈弁閉鎖不全症の原因の1つに大動脈解離があり,診断には経胸壁心臓超音波検査やCT検査が有用であるが,解離が限局している場合には原因診断に難渋する.今回,われわれは限局的なValsalva洞解離が急性大動脈弁閉鎖不全症の原因と術中に判明した1例を経験したため報告する.症例は71歳男性.高血圧症,糖尿病などで近医通院中であった.1週間続く咳嗽と呼吸困難で近医を受診し,急性心不全の診断で当院に紹介となった.精査で急性の大動脈弁閉鎖不全症による心不全と判断した.経胸壁心臓超音波検査や単純CT検査で大動脈基部の解離は認めなかった.内科にて薬物加療を開始したが,心不全状態は悪化したため,入院6日目に準緊急手術を行う方針とした.術中に,大動脈弁閉鎖不全症の原因が限局的なValsalva洞解離により大動脈弁交連部が離開し落ち込んでいるためと判明したため,術式を大動脈弁置換術からBentall手術(Piehler法)に変更し,手術を終えた.術後は気胸や器質化肺炎の合併により,術後挿管期間は7日間,ICU滞在期間は14日間に及んだが,術後35日目にリハビリ転院できた.限局的なValsalva洞解離を原因とした急性大動脈弁閉鎖不全症は稀であり,文献的考察やハートチームとしての対応を踏まえて報告する.

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