2024 年 53 巻 5 号 p. 274-277
症例は71歳女性.自宅で倒れているところを発見され当院に救急搬送された.救急隊接触時に意識障害,右半身麻痺,右共同偏視を認め,病院到着後の造影CTで急性大動脈解離Stanford A型および解離に伴う左総頸動脈完全閉塞を認めた.末梢の左内外頸動脈に造影効果を認め,来院後に意識障害および右麻痺は改善したため,緊急で上行弓部大動脈置換術を施行した.大動脈切開時に左総頸動脈からの逆血を確認できたが順行性脳灌流を試みると送血圧の上昇を認め,左側の脳内酸素飽和度(regional Saturation of Oxygen: rSO2)は改善せず左側の脳血流障害が残存した.冷却中に左頸部を切開,左内頸動脈を露出し人工血管を縫着した.人工心肺から左内頸動脈灌流を行うと左rSO2は著明に改善した.最終的に4分枝付き人工血管と吻合し左内頸動脈を血行再建した.術後は粗大な脳梗塞は認めず後遺症も認めなかった.急性大動脈解離Stanford A型では脳虚血解除目的の頸動脈血行再建を含めた外科治療が重要と思われた.