2024 年 53 巻 6 号 p. 318-323
症例は66歳,男性.1カ月前に化膿性脊椎炎の入院歴があった.呼吸困難を主訴に受診し,経胸壁心臓超音波検査で感染性心内膜炎による重度大動脈弁逆流を疑い,緊急手術を行った.大動脈弁は3尖で,弁尖が著しく破壊され疣贅が付着していた.弁尖を切除すると,左冠尖と無冠尖の交連直下(弁間線維三角)に空洞を認め,体外循環前の術中経食道心臓超音波検査を見直すと,同部位に奇異性運動をする左室憩室を認めていた.低左心機能で心停止時間を短縮するために,憩室は放置し大動脈弁を置換した.体外循環からは大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping; IABP)補助下で離脱した.集中治療室帰室後に血圧が低下したため,経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support: PCPS)を開始したが,術後5日目にPCPSから,6日目にIABPから離脱した.IABPから離脱した2時間後に心室細動,また術後9日目にtorsades de pointesとなったが,いずれも1分弱で洞調律に復した.抗菌薬の静注を6週間行う予定で,術後30日目現在退院へ向けリハビリテーション中である.