日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告 [成人心臓]
Cutibacteriumポケット感染が右室穿通したscrew-in電極内腔経由で伝播し心嚢内膿瘍を形成した1例
井内 幹人那須 通寛田中 仁仲井 健朗香西 英孝
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2024 年 53 巻 6 号 p. 324-328

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抄録

症例は70歳,男性.61歳時,徐脈性心房細動のためscrew-in電極を用いてVVIペースメーカーが移植された.69歳時に電池交換されたが,1年後にペーシング不全のため新電極が追加され,古い電極はシリコンキャップで近位端を閉鎖後ポケット内に納められた.2カ月後に発熱のため当院総合診療科に入院した.感染所見を認めなかったが,心嚢液の増加が認められ,抗ARS抗体陽性で間質性肺炎の既往があったため,非特異的心膜炎としてコルヒチン,アスピリンを投与し,2週間で心嚢液は消失した.2カ月後にアスピリンの減量を始めたが,炎症反応の再燃があり,CTにて横隔膜との位置関係は不明であるが,右室下壁と肝臓の間に膿瘍を認め,右室穿通した旧電極が膿瘍腔と連続していた.胸骨正中切開,心停止下に上大静脈,右房,三尖弁,前乳頭筋と線維性に強固に癒着していた旧電極を剥離後,抜去した.膿瘍腔は横隔膜を越えておらず心嚢内に止まっており,膿瘍腔,ポケット内を洗浄後閉胸した.ポケット内,旧電極内腔,膿瘍腔に液貯留を認め,すべてよりCutibacteriumが検出されたが,感染の再燃を認めなかった.後方視的にはCutibacteriumによるポケット感染が電極内腔を伝播し,右室穿通し心表面脂肪組織にあったscrew-in電極遠位端周囲の瘢痕組織に膿瘍を形成した可能性が高いと考えられた.特異な感染伝播形態をとった稀な症例であったので報告する.

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