2024 年 53 巻 6 号 p. xxi-xxvi
昨今の研究より,包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の治療における外科的バイパス術の重要性が増してきている.特に下腿病変に対するdistal bypassは,血管外科医として習得しておくべき非常に重要な手技となっている.Distal bypassの成功には,正確な手術手技は当然のことながら,それ以上にCLTI治療に対するエビデンスに基づく長期的な治療戦略の構築が重要となる.病変の状況,患者のリスク,そして術者の技量を総合的に判断して適応を決め,静脈を可能なかぎり有効に使用した愛護的な吻合技術,そして周術期の管理の工夫や長期遠隔期までの有効なフォローアップが相まってはじめて良好な成績を収められるものである.Distal bypassは術者の弛まぬ向上心と救肢への情熱に裏打ちされる手技であると言って過言はない.