日本心臓血管外科学会雑誌
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第54回日本心臓血管外科学会学術総会 卒後教育セミナー
経カテーテル肺動脈弁留置術
小暮 智仁
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2024 年 53 巻 6 号 p. xxvii-xxxi

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抄録

経カテーテル肺動脈弁留置術(Transcatheter Pulmonary Valve Implantation:TPVI)は,ファロー四徴症を中心とした右室流出路形成術後の患者の遠隔期肺動脈弁狭窄,閉鎖不全症に対して,繰り返す開胸手術を回避する目的で開発された.ファロー四徴症は代表的なチアノーゼ心疾患であり,心内修復術の治療成績向上に伴い多くの患者が成人期に達しているが,術後遠隔期には続発症,遺残症が問題になる.特に肺動脈弁閉鎖不全症は多くの症例に合併し,心不全や不整脈,突然死の原因となる.しかし,術後長期にわたって無症候で経過し,また幼少期からの生活制限により症状を感じにくい背景もあり,症状出現時には右心機能の悪化が重度になっている例を経験するため,適切なタイミングでの治療介入が肝要である.現在までの標準治療は外科的肺動脈弁置換術だが,低侵襲で,繰り返す開胸の負担を軽減できる経カテーテル肺動脈弁留置術が日本でも承認になり,新たな治療選択肢になった.現在国内では導管置換術後と生体弁置換術後の症例に対してはSAPIEN3弁(エドワーズライフサイエンス社)が,自己組織温存例に対してはHarmony弁(メドトロニック社)が適応となっている.適応患者が多いHarmony弁は国内29施設で治療可能となり,2024年8月現在までに210例以上に留置され良好な成績を納めている.今後,経カテーテル肺動脈弁留置術のさらなる普及により多くの患者に最適な時期の治療介入が進むことが望まれる.

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