2025 年 54 巻 1 号 p. 23-26
近年,開胸手術が困難な僧帽弁閉鎖不全症症例に対しMitraClip(Abbott Vascular, Redwood City, California, USA)が施行される症例が増加している.一方,MitraClip不成功により外科的再介入を要する場合もあり患者背景から外科的再介入はハイリスクとなる.今回,MitraClip施行後に早期および中期に外科的再介入を要した2例を経験したため報告する.症例1は82歳男性.慢性心房細動による重度の僧帽弁閉鎖不全症(MR)で心不全を繰り返し,高齢でフレイルであることからMitraClipを施行した.しかし,留置後にクリップの脱落によるMRの急性増悪で心不全コントロールがつかず留置後10日目に僧帽弁置換術(MVR)を施行した.症例2は72歳男性.重度の虚血性MRで心不全となるも出血性脳梗塞の併発や肺気腫の既往からMitraClipを施行した.MitraClip施行により僧帽弁狭窄(MS)を来すも内科治療にて心不全が代償化された.しかし,留置後2年でMRとMSにより心不全増悪となりMVRを施行した.MitraClip施行後に外科的再介入を要する場合,弁置換術を必要とするような開胸手術が不可欠となる.弁置換術を施行する場合は,弁下組織を可能なかぎり温存する工夫が重要であると考えられた.