日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告 [大血管]
重症COPD併存多発性大動脈瘤に対し下行大動脈をアクセスルートとしたステントグラフト内挿術等4期的手術を行った1例
佐野 友規岩田 圭司澁川 貴規柿澤 佑実
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2025 年 54 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

重症COPDを併存する多発大動脈瘤に対して,工夫したアクセスルートを用いたTEVARを含む4期的手術を行った症例を経験したので報告する.症例は71歳女性.近医胸部Xpで,胸部大動脈瘤(TAA)を疑われた.CTでは,大動脈蛇行と,最大で最大短径65 mmのTAAなどを含む,計6つの大動脈瘤を認めた.しかし,1秒率39%,%肺活量64%の高度混合性換気障害を併存していたため,耐術能の観点からTEVARを含めた多期的手術が選択された.また,両側の腸骨動脈から大腿動脈にかけての石灰化が高度であり,狭窄を伴っていること,大動脈蛇行が高度であることなどから,血管内治療の際のアクセスルートの工夫が必要であった.1期目では,TAAに対して下行大動脈をアクセスルートとしたTEVAR,2期目では,胸腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術(腹部4分枝再建),3期目では,残存TAAに対して人工血管側枝をアクセスルートとしたTEVAR,4期目ではエンドリークに対する追加TEVARと腹部大動脈瘤,総腸骨動脈瘤に対するEVARの計4期によって治療を完了した.低侵襲化を念頭にステントグラフト内挿術のアクセスルートなど治療戦略を工夫し,術後呼吸器合併症含め,重篤な合併症を回避できた.

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