2025 年 54 巻 1 号 p. 5-8
症例は67歳男性.心筋梗塞後の左室瘤に対して手術加療目的に当科紹介となった.手術では,左室瘤の開口部は50×20 mmであり,両乳頭筋が近く,乳頭筋の変位とそれによる僧帽弁への影響を避けるためdouble patch closureを行った.心内膜側にはウシ心膜パッチを,心外膜側にはダクロンパッチをあてて,2枚のパッチ間にフィブリン糊を注入した.僧帽弁形成術,冠動脈バイパス術も行い,術後は合併症なく経過し,術後27病日に自宅退院となった.病理組織所見にて瘤壁に心筋細胞を認めず仮性瘤の診断となった.本症例のように開口部が大きく乳頭筋が近い左室瘤に対してはdouble patch closureが有効であると考えられた.