2025 年 54 巻 1 号 p. 9-13
症例は70歳女性.7年前より他院で混合性結合組織病(MCTD)と診断されステロイドの内服治療を受けていたが,症状の安定にともない半年前より中止されていた.労作時の呼吸苦と発作性心房細動をみとめるようになり大動脈弁狭窄および狭心症と診断されたため,生体弁による大動脈弁置換および前下行枝へ冠動脈バイパス術を施行した.術中に血小板の急激な減少を伴う出血傾向とLOSをきたしたためにIABPを装着して帰室した.術直後に右肺全葉の浸潤影をみとめ,第4病日からはふたたび著明な血小板減少をみとめるようになった.第5病日にIABPを抜去し抗凝固剤をヘパリンからナファモスタットに変更したが血小板減少は持続し,第9病日には術前には見られなかった回旋枝根部の完全閉塞をみとめたため緊急PCIを施行した.血小板はその後も減少し続け手指先端や口腔内の壊死が進行し粘血便も出現するようになった.第24病日には原因不明のくも膜下出血を併発し第34病日に広範囲腸壊死により死亡退院となった.