2025 年 54 巻 2 号 p. 69-71
症例は89歳の女性.数日前からの胸痛を主訴に近医を受診した.12誘導心電図で急性冠症候群が疑われたため,当院へ救急搬送された.緊急冠動脈造影検査で左主幹部に高度狭窄を認めた.大動脈内バルーンパンピング(IABP)を留置し,準緊急手術の方針とした.心拍動下冠動脈バイパス術を施行したが,術後に僧帽弁前尖収縮期前方運動(SAM)による僧帽弁逆流を生じ,循環動態が不安定であった.カテコールアミンの減量,容量負荷,β遮断薬の投与などSAMに対する一般的な治療に加えて,IABPを抜去することでさらに循環動態の改善が得られた.本症例においてIABPがSAMの増悪因子であった可能性がある.