日本心臓血管外科学会雑誌
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第54回日本心臓血管外科学会学術総会 卒後教育セミナー
TAVI時代の弁膜症手術
鳥飼 慶
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2025 年 54 巻 2 号 p. i-xii

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抄録

ハイリスクAS患者に対するカテーテル的治療としてTAVIが登場し,その低侵襲性,良好な臨床成績から国内でも急速に普及している.TAVIは大動脈弁の治療戦略に大きなインパクトを与えており,AS患者においてはすべての治療方法をオプションとしたライフタイムマネージメントを行うことが求められている.現在,TAVIはローリスク患者にも適応が拡大し,患者背景や解剖,患者希望等からTAVIあるいはSAVRの適切な治療法をハートチームで決定することが望ましい.エビデンスが揃いつつあるTAVIにおいても,耐久性の点では外科生体弁と比較していぜん不明な状態が続いている.近年SAVRでは生体弁の使用比率が増加しており,今後生体弁機能不全に対する治療に遭遇する場面は多くなることが予想される.患者余命が弁の耐久性を上回ることが予想される症例では初回SAVRの実施時に,将来的な追加治療(Redo AVRあるいはTAV-in-SAV)が問題なく行えるよう配慮した手技の実施が望まれる.また,国内でもTAVI導入から時間が経ちTAVI後の再治療に対する準備も必要となっている.構造的劣化かつ解剖学的制限がなければ,その低侵襲性からRedo TAVRによる治療が望ましいが,種々の理由からTAVR Explant,AVRが選択される患者も少なからず存在し,植込まれたTAVI弁の特性を理解した手術の実施が求められる.

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