2025 年 54 巻 5 号 p. 216-219
症例は75歳男性.僧帽弁形成術,自己心膜製ステントレス弁による僧帽弁置換術,機械弁による僧帽弁置換術と3度の心臓手術歴があり,最終手術から6年が経過していた.利尿薬抵抗性の下腿浮腫が出現し,精査で心嚢内慢性拡張性血腫による右心不全が原因と考えられた.心不全改善目的に左側開胸で血腫摘除術を施行し症状の改善を得た.血腫は以前の閉胸時に使用されたePTFE心膜シートに被覆されるように貯留していた.慢性拡張性血腫は稀な病態であり,今回ePTFE心膜シートによる広範囲被覆が血腫形成に影響を与えた可能性が示唆されたため,若干の文献的考察を加えて報告する.