2026 年 55 巻 4 号 p. 170-175
成人Ebstein病に対するCone手術の際に僧帽弁収縮期前方運動(SAM)を伴う動的左室流出路狭窄(dynamic LVOTO)を合併した1例を経験したので報告する.症例は40歳代女性,幼少期にEbstein病と診断され,数年前から徐々に労作時呼吸苦が増強し手術目的で当科紹介となった.手術は胸骨正中切開アプローチによるCone手術を行った.人工心肺離脱の際,SAMによるsevere MRおよびdynamic LVOTOが出現した.左房圧低値,中心静脈圧(CVP)高値であったため,CVP高値の原因は右心不全と判断し,両方向性グレン手術を追加した.SAMに対してはカテコラミンを減量し,左室後負荷軽減目的に大動脈内バルーンパンピング(IABP)を導入した.再度人工心肺離脱を試みたがSAMによるsevere MRおよびdynamic LVOTOの改善は得られず,central V-A ECMO+IABPの補助循環でICUに帰室した.術翌日,IABPによる後負荷軽減作用によってSAMおよびLVOTOが増悪していることが経食道超音波検査で判明した.後負荷増大目的にノルアドレナリンおよびバソプレシン投与を開始し,IABP設定を下げたところMRおよびLVOTOが改善したため同日ECMOを離脱した.術後3日目にECMOカニューレ抜去を含めた二期的胸骨閉鎖およびIABP抜去を行った.