抄録
近年,完全大血管転位症に対する動脈側スイッチ手術後,最も多くみられる合併症として肺動脈狭窄の発生が報告されている.われわれも12例の遠隔生存中4例に対し,進行性の肺動脈狭窄のため再手術を施行した.初回手術から再手術までの期間は平均2年6ヵ月であった.吻合部の狭小化または肺動脈絞扼部の発育不全による弁上狭窄を全例に認め,分岐部狭窄,弁狭窄を各1例に認めた.再手術は2例においてtransannular patchによる右室流出路再建,他の2例では主肺動脈,分岐部のパッチ拡大を行った.再手術による死亡はないが,再手術後も全例,軽度~中等度の圧較差が残存した.遠隔期の肺動脈狭窄は初回手術時の術式に起因する部分が大きいと思われ,最近では大血管の吻合を全周外面からのU字縫合とすること,冠動脈の移植に際しては,Valsalva洞の組織を可及的に温存したうえ,補綴には自己心膜を用いること,など術式の改良を試みている.