抄録
本邦では真菌性心内膜炎の報告は未だ少数である.巨大なCandida菌塊を三尖弁に形成した41歳,男性の真菌性心内膜炎を経験し早期の三尖弁置換と抗真菌剤の投与により治癒せしめたので報告した.三尖弁の真菌性心内膜炎の報告はきわめて少なく,本邦では自験例を含め4例の報告をみるのみであった.三尖弁の真菌性心内膜炎の発生には中心静脈カテーテルの留置と抗生物質の投与が重要な誘因と考えられ,早期診断には心エコー検査が有用で,中心静脈カテーテルに起因する敗血症,あるいは血行動態の変化を示すものではくりかえし心エコー検査を行うことが必要である.治療に際しては,早期の弁置換と術後長期にわたる抗真菌剤の投与により治癒せしめることが可能と考えられた.