日本心臓血管外科学会雑誌
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開心術におけるハプトグロビンの変動とその意義
清水 剛石丸 新古川 欽一工藤 龍彦
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1992 年 21 巻 2 号 p. 109-116

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抄録
開心術症例35例の術前血清ハプトグロビン (Hp) 値の変動に関与する因子を検討するとともに, 術前Hpの低下が体外循環中の血色素尿の発生に与える影響を検討した. 開心術症例の術前Hp値は炎症反応により容易に増加し, また3種類の血清型 (1-1型, 2-1型, 2-2型) では2-2型が低値を示した. 弁膜障害による赤血球の機械的溶血による低下は, sclerotic change を伴った大動脈弁疾患においてきたしやすい傾向があり, 6例中2例に無Hp血症を認めた. 体外循環中の血清 (血漿) ヘモグロビンの増加率は0.36mg/dl/minであったが, Hp値は体外循環開始直後には術前値の約30%以下に低下し, 術前Hpの低下を認めた症例は体外循環時間が同程度であれば血色素尿の発生率は高率となった. このため, 開心術の施行にあたっては術前にHpの測定および型判定を行い, 術前にHpの低下を認めた場合Hp製剤の補充療法などを考慮すべきであると考えられた.
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