日本心臓血管外科学会雑誌
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胸部大動脈瘤に対する血栓曠置術の成績と問題点
浦山 博片田 正一高橋 政夫土田 敬手取屋 岳夫竹村 博文渡辺 洋宇
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1992 年 21 巻 2 号 p. 177-180

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抄録

胸部大動脈瘤に対する血栓曠置術10症例を対象とした. 疾患は解離性大動脈瘤7例, 粥状硬化性大動脈瘤3例であり, 全例で瘤の範囲は下行大動脈の大部分を含むものであった. 術式は非解剖学的バイパスを腹側に置き, 永久クランプの部位は瘤の中枢側のみ9例で瘤末梢側の遮断は1例に行った. 術後観察期間は14日から6年8か月であった. 3か月以上観察できた8例中5例が横隔膜までの下行大動脈の完全な血栓曠置を認めた. 不完全な血栓曠置例のうち1例で28か月に瘤破裂をきたしたが末梢側遮断の追加にて治癒し, 1例にて63か月に瘤破裂をきたし死亡した. 他の1例で12か月後クランプの肺動脈穿通にて死亡した. 1例で術後15か月に一過性の脊髄障害を認めた. 2例で便秘をきたしたが腸閉塞の合併はなかった. 術後に上下肢の血圧差は認めず, また, 腎機能の悪化した症例はなかった. 本術式の適応は厳格であるべきであり, 術後の厳重な経過観察が必要であった.

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