抄録
不完全型心内膜床欠損症では老年期まで放置されることは少ない. 文献的にも50歳以上の手術症例はこれまで8例が報告されているのみで, 最高齢者は60歳であった. 今回著者らは63歳, 67歳の2例に根治術を行い良好な結果を得た. 1例は60歳からの3年間に急速に肺高血圧が進行し, 他の1例は僧帽弁裂隙に著明な石灰化があり, 術後に僧帽弁逆流が軽度残存し, また鬱血肝から肝硬変の進行がみられた. 高齢者では肺機能, 腎機能の異常を呈することが多く, 心の予備力も少ないため, 術中の心筋保護を十分に行うとともに, 体外循環離脱時のCVPを15cmH2O以下にとどめ, カテコールアミンによるサポートを十分に行うことが必要である, 以上より, 可及的早期の手術が望まれるが, 高齢者といえども積極的治療の姿勢が望まれる.