日本心臓血管外科学会雑誌
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先天性冠動脈瘻の心電図虚血性変化と手術適応
長津 正芳黒澤 博身今井 康晴遠藤 真弘
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1992 年 21 巻 5 号 p. 431-437

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抄録

先天性冠動脈瘻 (以下CAF) の手術適応と至適時期に関しては定説をみず不明の点も多い. そこで今回, 最近17年間のCAF単独例33例につき, 心電図虚血性変化の有無と成因に関し平均10.0年間にわたり検討した. 33例中心電図上有意虚血性変化を認めたのは9例 (I群) で, 他の24例 (II群) との比較では, 臨床症状, 左右短絡率 (I群22±19, II群19±18%), IE発生率 (I群1/279, II群3/618 patient・year) に有意差を認めず, 瘻が心腔に開口する chamber 型例に限り小児早期の有意虚血例を認めた. I群手術例は7例 (78%) で, うち5例に心電図の改善を認め, 3例に心筋障害の遺残を認めた. 中等量短絡以下のCAFであれば血行動態は長期間安定しており, よって大量短絡による心不全例やIE例は早期手術適応, 他は開口部位と年齢により“chamber 型は小児早期から”“肺動脈型は成人以降かつ運動負荷時の”心筋虚血発現の観察が適応時期決定に重要と思われた.

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