1992 年 21 巻 5 号 p. 474-478
症例は49歳の女性で冠動脈硬化症の危険因子は高血圧症のみであった. 狭心症発症より3か月で心内膜下梗塞の疑いにて近医に緊急入院し, 不安定狭心症のため当院へ転院した. 冠動脈造影検査の結果左冠動脈入口部の90%の孤立性狭窄が認められた. 手術は心停止下に大動脈前壁を左冠動脈口に向って斜切開し左冠動脈主幹に約8mm切開を延長した. 大伏在静脈パッチを6-0 monofilament 糸の連続縫合にて冠動脈切開部と大動脈切開部に縫合し入口部拡大を行った. 術後経過は順調で狭心症は消失した. 術後造影では左冠動脈入口部はよく拡大されていた. 術後約1年の経過観察で狭心痛の再発を認めていない.