抄録
希な膝窩動脈外膜嚢腫の2例を経験した. 症例1は51歳の女性で, 主訴は歩行時の下肢倦怠感, 疼痛であった. 症例2は34歳の男性で, 主訴は膝屈曲時の下肢しびれ感であった. 両者とも血管造影では三日月状の狭窄がみられ, CTでは動脈周囲に cyst 様病変が描出された. MRIではT2強調画像で高輝度の腫瘤であった. 外膜嚢腫の診断にて嚢腫壁切除術を施行し, 良好な成績が得られた. 外膜嚢腫は希な疾患で, これまで本邦では43例しか報告されていないので, 報告例を集計して疾患の特徴を明らかにした. 臨床症状は間歇性跛行を呈することが多く, 閉塞性動脈硬化症 (ASO) と似ているが, ASOと異なりバイパス術を必要とすることは希で, ほとんどは嚢腫壁切除のみで治癒する. 若年者で間歇性跛行をみた場合には, 本症の存在を頭において血管造影, 超音波, CT, MRI等の検査を行ってASOとの鑑別を行う必要がある.