1992 年 21 巻 5 号 p. 496-500
高安動脈炎により左腎動脈に狭窄を生じた腎血管性高血圧患者に対し, 経皮的腎動脈形成術 (PTA) を3回にわたり施行したが, 左腎動脈は閉塞し, 左無機能腎となった. この患者に対し, 腹部大動脈左腎動脈バイパス術を行い, 血圧は低下し左腎機能も改善した. 術後5か月目に, 腎門部より末梢の病変による高血圧の再発を認めたが, 術前示した症状 (頭痛) はなく, 降圧薬の投与量は, 術前に比較し少ない量であり, 左腎機能は術直後と比較して低下していなかった. 動脈の狭窄病変に対するPTAは繰り返し行える利点があり, 動脈硬化性の病変ではその成績も良好であるが, 高安動脈炎による狭窄には再狭窄を起こす確立が高く, 再狭窄により完全閉塞を起こす前に人工血管によるバイパス手術が良いと考えられた.