日本心臓血管外科学会雑誌
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下大静脈内進展を伴う後腹膜腫瘍の外科治療における体外循環の応用
平石 泰三小林 亨櫻井 温佐藤 尚司大畑 俊裕筆本 由幸古武 敏彦
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1992 年 21 巻 6 号 p. 540-543

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抄録
下大静脈内進展を伴う後腹膜腫瘍6例 (腎細胞癌4例, 副腎癌1例, 睾丸腫瘍1例) に対して常温完全体外循環を用いて外科治療を行った. 腎細胞癌の2例を除く4例では術前肺あるいは骨への遠隔転移を認めた. 6例中5例は, 術後追跡期間1年から7年 (平均3年3か月) で, 健在である. 睾丸腫瘍および副腎癌の症例ではいずれも術前遠隔転移を有したが, 術後の放射線および化学療法にて転移巣の消失を認めた. 腎細胞癌に関して術前遠隔転移を有した2例中1例が術後6か月で死亡したが, その死因は周辺臓器への浸潤によるのであり, 体外循環中の腫瘍細胞の播種によるものではなかった. 2例で体外循環回路内のフィルターおよび回路血液の細胞診を行ったが, いずれも陰性であった. 術後遠隔成績および体外循環回路の細胞診の成績からは, 術中の腫瘍細胞の播種の可能性は低く, 下大静脈内進展を伴う後腹膜腫瘍に対して常温完全体外循環を用いた外科治療は有用である.
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