日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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21 巻, 6 号
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  • 基礎実験および臨床応用
    足立 孝, 横山 正義, 板岡 俊成, 大貫 恭正, 清水 眞由美, 新田 澄郎
    1992 年 21 巻 6 号 p. 525-528
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    薬剤抵抗性心室頻拍に対して従来より外科手術および冷凍凝固法などが行われてきた. 冷凍凝固法の有効性は各所でも報告されているが問題点も散見される. われわれは冷凍凝固法にかわる方法として Bard®社システム6000 Argon beam coagulator (ABC) をイヌ心筋で使用し照射時間, 焼灼深度, 心筋凝固野に関し良好な基礎データを得た. この成績をもとに単一起源で非虚血性心室頻拍4例にABCを外科手術の補助手段として臨床応用した. 結果1例では術後心室頻拍は消失し抗不整脈剤の投与は不要となった. 残る3例では心室性不整脈の大幅な減少と薬剤投与量の減少を認め有効であると判断した. ABCは症例を選べば心室頻拍に対しても手術補助手段として有効である.
  • 春田 泰伸, 田代 忠, 田中 攻, 永田 昌彦, 中村 正直, 藤堂 景茂
    1992 年 21 巻 6 号 p. 529-533
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1987年12月から1991年7月までの3年8か月にIMAを使用した単独A-Cバイパス137例中26例に free IMAを使用した. Free IMA 26例27本のうち13本 (48%) が sequential 吻合法であった. これら26例の患者1人当りの総バイパス数は平均3.6本/pt, 平均大動脈遮断時間は60.7分であった. Free IMAの早期成績は術後約1か月のグラフト開存率97.2%と同期間の in situ IMA 96.1%と有意差なく, 術後合併症は再開胸止血術: 0, 縦隔炎: 0, 呼吸不全を伴った横隔神経麻痺: 1であった. 早期死亡は26例中1例 (3.8%) と in situ IMA 111例中8例 (7.2%) と比較しても良好であった. この方法の長所はIMAの長さが不足する場合 free graft とすることで十分な長さを得ることができIMAの使用が可能となり, 遠位の責任冠動脈との sequential 吻合や多枝バイパスが容易になることにある.
  • 酒井 敬, 平田 展章, 榊 成彦, 中埜 粛, 松田 暉
    1992 年 21 巻 6 号 p. 534-539
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    高齢者 (75歳以上) の急性心筋梗塞 (AMI) に対する緊急冠動脈バイパス (CABG) の手術成績について検討した. 研究対象は緊急CABG 39例 (男30, 女9, AMI発症後3.3日以内に施行) であり, 対象を75歳以上の10例 (男8, 女2例, 84~75歳) と75歳未満の29例 (男25, 女4例, 73~40歳) の2群に分けた, 対照として再疎通療法 (PTCRあるいはPTCA) のみを行った75歳以上の内科治療例23例 (男13, 女10例, 82~75歳) と比較した. 75歳以上の高齢者の手術死亡率は3/10 (30%), 75歳未満例では9/29 (31%) で, 死亡原因は両群ともにLOSが多かった. 在院死亡率は75歳以上の高齢者で5/10 (50%), 75歳未満例では13/29 (45%) と高率であった. いずれも遷延する術後の合併症で死亡した. 内科治療群 (再疎通単独療法) の死亡率は52%であり, 再梗塞死を高率に認めた. 75歳以上の高齢者と75歳未満例を比較すると, 術前の重症度, 冠血管病変に差はないが, 高齢者では術後の心拍出量は増加せず, 75歳未満例に比べ低値を示した. 術後は経口摂取, 離床までに長期間を要した. 以上より高齢者では, 綿密な術後管理のもとに, 緊急CABGを選択する方針である。
  • 平石 泰三, 小林 亨, 櫻井 温, 佐藤 尚司, 大畑 俊裕, 筆本 由幸, 古武 敏彦
    1992 年 21 巻 6 号 p. 540-543
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    下大静脈内進展を伴う後腹膜腫瘍6例 (腎細胞癌4例, 副腎癌1例, 睾丸腫瘍1例) に対して常温完全体外循環を用いて外科治療を行った. 腎細胞癌の2例を除く4例では術前肺あるいは骨への遠隔転移を認めた. 6例中5例は, 術後追跡期間1年から7年 (平均3年3か月) で, 健在である. 睾丸腫瘍および副腎癌の症例ではいずれも術前遠隔転移を有したが, 術後の放射線および化学療法にて転移巣の消失を認めた. 腎細胞癌に関して術前遠隔転移を有した2例中1例が術後6か月で死亡したが, その死因は周辺臓器への浸潤によるのであり, 体外循環中の腫瘍細胞の播種によるものではなかった. 2例で体外循環回路内のフィルターおよび回路血液の細胞診を行ったが, いずれも陰性であった. 術後遠隔成績および体外循環回路の細胞診の成績からは, 術中の腫瘍細胞の播種の可能性は低く, 下大静脈内進展を伴う後腹膜腫瘍に対して常温完全体外循環を用いた外科治療は有用である.
  • 岩淵 知
    1992 年 21 巻 6 号 p. 544-551
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    各種僧帽弁輪縫縮術が, 弁輪運動におよぼす影響について検討する目的で, 以下の実験を行った. 雑種成犬を用い, 僧帽弁輪にレントゲン不透過性マーカーを装着した後, 透視下に観察して, 対照群, Kay法に準じて僧帽弁後尖弁輪を限局性に縫縮する後交連側後尖弁輪縫縮群, 後尖弁輪中央部縫縮群, 前交連側後尖弁輪縫縮群, およびDe Vega 法に準じた後尖弁輪全長縫縮群の5群について検討した. その結果, 後交連側後尖弁輪縫縮では, 弁輪面積は対照群と同様の変化を認め効果的な縫縮方法と思われた. 後尖弁輪中央部縫縮では, 弁輪面積は対照群と同様の変化を認めたが, 縫縮部位が前尖弁輪側に引き寄せられる形態を示した. 前交連側後尖弁輪縫縮では, 心房収縮時に弁輪の収縮が著明で, 心室収縮時の弁輪の収縮は不良であった. 後尖弁輪全長縫縮では, 心房収縮時の弁輪面積の狭小化は認めず, 心房収縮の影響がブロックされる可能性が示唆された.
  • 尾上 雅彦, 森 渥視, 渡田 正二, 杉田 隆彰, 白石 昭一郎, 野島 武久, 田畑 良宏, 松野 修一
    1992 年 21 巻 6 号 p. 552-555
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    CPKのアイソザイムであるCPK-MMには, さらにMMa, MMb, MMcの3つのサブバンド (isoform) が存在する. 急性心筋梗塞後には血清中のMMaやMMa/MMcが他の心筋逸脱酵素より早期に上昇することが報告されているが, 今回われわれは開心術中および術後に経時的に血中のCPK, CPK isozyme, CPK isoform を測定し, CPK isoform が開心術における心筋障害の指標となるかどうかを検討した. CPK-MBは体外循環6時間後に最高値を示したのに対し, MMa/MMcは, 体外循環終了直後には最高値を示していた. また体外循環終了直後のMMa/MMcは, 体外循環終了6時間後のCPK-MBと統計学的に有意な正の相関を示した (Y=24.46X+16.68, r=0.63, p<0.05). CPK-MBの最高値は心筋障害の程度とよく相関することから, 体外循環直後のMMa/MMcもまた開心術における心筋障害を反映していると考えられ, MMa/MMcは開心術における心筋障害の程度を, きわあて早期に評価可能な指標となりうる可能性が示唆された.
  • 乾 清重, 長嶺 進, 岡田 嘉之, 乙供 通稔, 白壁 昌憲, 横山 紘一
    1992 年 21 巻 6 号 p. 556-560
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1987年1月より1991年1月までに当院CCUに収容された急性心筋梗塞症例372例のうち10例 (2.7%) に左室自由壁破裂の発症を認めた. 10症例中亜急性型3例と慢性型2例の計5例を救命した. 高齢者, 女性, 初回梗塞が危険因子と考えられた. PTCA後の再疎通が破裂発症の誘因である可能性があるが, PTCA施行非施行群間で発症率に差はみられなかった. しかし, PTCA非施行群の平均年齢が有意に高く, PTCA非施行破裂発症例のなかに自然再疎通例があることを考慮した場合, PTCA等による再疎通は破裂発症の一誘因と考えられた. 急性型の救命は困難であり, 危険因子からみた high risk group に対する重点的予防が重要と考えられた. 出血部周囲が脆弱で, 梗塞範囲が把握しにくいことより, 亜急性型の一部および慢性型に対する修復法として, 破裂部位直接縫合よりも fibringlue-oxycellulose fixation 法が有用と考えられた.
  • 伊藤 康博, 大内 将弘, 近江 三喜男
    1992 年 21 巻 6 号 p. 561-565
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    高齢者心房中隔欠損症手術症例における問題点と呼吸機能の特徴に関して検討した. 対象は50歳以上の15症例, 術前のNYHAはII度が8例, III度が7例であった. 心胸郭比は60±9%, 心電図は洞調律8例, 洞性不整脈1例, 心房細動6例であった. 呼吸機能は%VCが74±13%, 1秒率が65±9%と低下していた. 左-右短絡は57±15%で8例に少量の右-左短絡を認め, 肺高血圧症は13例に合併していた. %VCは心胸郭比とr=-0.525, 収縮期肺動脈圧とr=-0.687, 平均肺動脈圧とr=-0.783と負の相関を示した. 手術は cardioplegia による心筋保護下に行い, 1例の上大静脈欠損型を除いて全例が卵円窩欠損型であった. パッチ閉鎖は9例に行い, これらには術後抗血栓療法を行った. 術後不整脈の治療を要するものが多かったが心胸郭比は有意に減少し, NYHAでは1例を除き全例がI度となった. 血栓塞栓症の発生もなく, 本症に対する手術は臨床的に有効なものであった.
  • 山本 晋, 布施 勝生, 成瀬 好洋, 渡邊 泰徳, 小林 俊也, 小西 宏明, 堀井 泰浩
    1992 年 21 巻 6 号 p. 566-569
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    72歳男性. 特発性間質性肺炎 (IIP) を伴う不安定狭心症の診断のもと冠動脈造影 (CAG) を施行し, LMTに90%の狭窄病変を認め, PTCAを施行したが約2か月後再び不安定狭心症となり, CAGでLMT 90%の再狭窄を認めたため, 冠動脈再建術 (CABG) を施行した. 術前, 胸部X線像では両側下肺野にびまん性細粒状影を認め, 聴診上も Velcro ラ音を聴取した. 手術は高齢者かつ肺機能低下例でもあることを考慮し, 短時間での血行再建を目標に伏在静脈を用いた2枝バイパスを行った. 体外循環終了後に一時的なPaO2の低下をみたが, 周術期は血行動態, 呼吸状態ともに安定しており, 第1病日に抜管した. 術後は特発性間質性肺炎の急性増悪もみられず29病日に退院した.
  • 富恵 博, 大原 正己, 善甫 宣哉, 藤岡 顕太郎, 江里 健輔
    1992 年 21 巻 6 号 p. 570-574
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    内腸骨動静脈瘻を伴った反射性交感神経性萎縮症はきわめてまれである. 症例は36歳, 女性. 既往歴に左卵巣腫瘍摘出術がある. 入院6か月前に腰椎椎間板ヘルニア根治術を受けた. 術前に訴えていた腰部から右大腿のしびれ感, 疼痛は消失した. しかし, 術後2週間目より右足背, 右足底の冷感, しびれ感が出現した. 症状は次第に増強し, 右下肢にチアノーゼをきたすようになった. 血管造影では左内腸骨動静脈瘻を認めたが, 右下腿動脈には異常なかった. 指尖容積脈波では右下肢波高の低下を認めた. 5%カルボカイン5ml硬膜外注入で右下肢指尖容積脈波高は著明に増高した. 左内腸骨動静脈瘻閉鎖術と同時に右腰部交感神経切除を施行した. 術後症状は改善し, 軽快退院した.
  • 金田 幸三, 河内 寛治, 森田 隆一, 西井 勤, 井上 毅, 谷口 繁樹, 川田 哲嗣, 水口 一三, 福富 正明, 北村 惣一郎
    1992 年 21 巻 6 号 p. 575-578
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    突然の無尿を発生した巨大腹部大動脈瘤の一手術例を経験した. 症例は71歳, 男性. 術前のCT写真にて, 最大径13cmの腎動脈下腹部大動脈瘤が発見され, これにより両側尿管が圧迫され無尿となったと考え, 緊急手術を行った. 開腹所見で, 瘤の破裂はなく, 周囲臓器との炎症性癒着もなく, 剥離は容易であった. 炎症性動脈瘤による尿管閉塞ではなく, 瘤による両側尿管の圧迫が発見され, 瘤切開直後より尿排出を認めた. 手術は straight Dacron グラフトによる人工血管置換術を行った. 左腎は無機能腎に陥っていたものの, 術後には右腎機能はほぼ正常にまで改善していることが, レノグラムにて確認しえた. 腹部CT写真, 術中所見, 摘出瘤壁の病理所見などから, いわゆる炎症性腹部大動脈瘤は否定された. 動脈硬化性腹部大動脈瘤による両側尿管の直接圧迫が本例の主たる病因であり, きわめてまれな一例と考えられた.
  • 鹿野 純生, 徳弘 圭一, 渡辺 善則, 藤井 毅郎, 塩野 則次, 鈴木 直人, 吉原 克則, 小山 信弥, 高梨 吉則, 小松 壽
    1992 年 21 巻 6 号 p. 579-582
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心原性ショックを呈した急性心筋梗塞後心室中隔穿孔に対して, 3回の手術を施行し救命しえた. 症例は64歳女性, 急性心筋梗塞発症6時間後に心室中隔穿孔出現し, 心原性ショックを呈したため緊急手術を施行した. 術後5病日に心室間短絡再発を認め, 心不全傾向増強したため術後7病日に再手術を施行した. 再手術後5病日にふたたび心室間短絡を認めたが, 循環動態は安定していたため, 再々手術は穿孔辺縁組織再生を待って施行する方針とし, 再手術後33病日に施行した. 術後経過は良好で再々手術後53病日に軽快退院した. 本症例の経験より, 短絡再発により循環動態悪化をきたすような症例に対しては, 再手術を施行する方針とすべきと考えられた.
  • 名和 清人, 辻 和宏, 紀 幸一, 寺本 滋, 林 健二, 宮地 康夫, 角南 博之
    1992 年 21 巻 6 号 p. 583-588
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    比較的希な形態の冠動脈・肺動脈瘻を合併した僧帽弁膜症2例に対し開心術を施行した. 症例1は心房細動とうっ血性心不全にて発症し, 精査の結果, 両側冠動脈・肺動脈瘻を合併した僧帽弁閉鎖不全症 (Sellers III度弱) と診断した. うっ血性心不全の再発のため瘻孔閉鎖と僧帽弁弁論縫縮術を体外循環下に施行した. 症例2は10年前の直視下僧帽弁交連切開術後の再狭窄例である. 今回の精査にて, 気管支動脈を介した左冠動脈と右肺下葉動脈との交通を認めた. しかし, 肺動脈分枝の狭窄はみられなかった. 体外循環下に異常血管の結紮と僧帽弁置換術を施行した. うっ血性心不全に対する冠動脈瘻の相乗的関連性と, 開心術症例でのCAGルーチン化の重要性, および心停止液の steal の問題に言及した.
  • 林 載鳳, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 香河 哲也, 松浦 雄一郎
    1992 年 21 巻 6 号 p. 589-592
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    希な炎症性腹部大動脈瘤の1例を経験した. 症例は78歳の男性で, 腹部腫瘤を主訴に来院した. 血液検査で軽度の炎症反応を示し, CT検査で直径5.5cmの腹部大動脈瘤であった. 瘤壁は著明に肥厚しており (外套徴候), 高輝度に描出された. 人工血管置換術を行い, 良好な成績がえられた. 瘤壁の病理組織学的所見では, 外膜にリンパ球, 形質細胞等の慢性炎症細胞浸潤が高度に認められた. 本症の本邦報告例10例を集計し, 年齢, 性別, 症状, 炎症反応の有無, 合併症, エコーやCT所見, 病理組織学的所見につき検討するとともに, 本症の原因, 診断, 治療に関して若干の考察を加えた.
  • 杉田 隆彰, 渡田 正二, 尾上 雅彦, 白石 昭一郎, 野島 武久, 田畑 良宏, 松野 修一, 森 渥視
    1992 年 21 巻 6 号 p. 593-596
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈手術時の脊髄障害は希だが, 患者の quality of life の上からも重大な合併症である. 今回, われわれは腹部大動脈・腸骨動脈領域の閉塞性動脈硬化症術後に右下肢麻痺を発症した1例を経験した. 症例は59歳の男性. 左総腸骨動脈, 右外腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症に対する腹部大動脈・両側大腿動脈バイパス術後に右側の第2腰髄 (L2) から第1仙髄 (S1) にかけての運動および痛覚麻痺が出現した. 脊髄障害は内科的治療などによりS1は改善したもののL2-L5は改善せず, 患者は術後3か月目に退院した. 腹部大動脈-大腿動脈バイパス術において, 粥状硬化の強い腹部大動脈に対する side clamp は腰動脈の開口部を閉塞させる可能性があり, 脊髄障害発症の危険性を高めると考えられる.
  • 倉岡 節夫, 春谷 重孝, 入沢 敬夫, 後藤 智司, 大関 一, 金沢 宏, 坂下 勲
    1992 年 21 巻 6 号 p. 597-599
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    左腎がん腎摘後, 右腎動脈99%狭窄による腎性高血圧および腎機能障害に嚢状胸部大動脈瘤を合併した68歳男性例に対し, 腎生検による残存腎実質機能の評価後に腎動脈狭窄を解除し, 二期的に胸部大動脈瘤切除術を施行した. 胸部大動脈瘤が破裂性ないしは切迫破裂性でないかぎり, single functioning ischemic kidney の renal shut down 防止が優先される.
  • 中山 義博, 真方 紳一郎, 夏秋 正文, 伊藤 翼, 山田 隆啓
    1992 年 21 巻 6 号 p. 600-604
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈造影法の普及により冠動脈瘻と遭遇する機会が増加しているが, これに冠動脈瘤を合併することはきわめてまれであり, われわれが調べえた範囲では過去20例の報告しかない. 今同われわれは, 嚢状動脈瘤を伴う両側冠動脈肺動脈瘻症例に対して, 完全体外循環下に瘻孔閉鎖および動脈瘤縫縮を施行し, 良好な結果を得た症例を経験したので報告する. 症例は68歳女性で, 胸部圧迫感と労作時呼吸困難を主訴に入院した. 前胸部に連続性雑音を聴取し, 冠動脈造影にて右冠動脈と左冠動脈前下行枝に流出血管を有し, 肺動脈主幹部に流入する冠動脈瘻と診断した. 嚢状動脈瘤を伴っていることに加え, 左-右シャント率が60%と多く, 労作時呼吸困難を伴っていることより手術適応と判断し手術を施行した. 術後の病理組織所見より, 冠動脈瘤壁は非常に詭弱であり, 破裂の危険性が高く積極的に手術治療を行うべきであると考えられた.
  • Balloon occlusion catheter の有用性
    建部 祥, 大関 一, 土田 昌一, 林 純一, 斉藤 憲, 山本 和男, 渡辺 健寛, 羽賀 学, 江口 昭治
    1992 年 21 巻 6 号 p. 605-608
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤が下大静脈に破裂し, 胸痛, 血尿にて発症した65歳男性例を経験し, 緊急手術にて救命した. 手術に際し, 瘻孔より balloon occlusion catheter を下大静脈に挿入して静脈性の出血をコントロールし, また血栓による肺塞栓症の防止に用いた. 瘻孔は約3cmで直接縫合閉鎖し, 腹部大動脈はY字型人工血管で置換した. 術後, 肺うっ血, 血尿等の症状はすみやかに軽快した. Balloon occlusion catheter の使用は出血のコントロールと肺塞栓症の防止に有用であった.
  • 鈴木 保之, 酒井 章, 久保 英三, 贄 正基, 大澤 幹夫
    1992 年 21 巻 6 号 p. 609-613
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心室中隔欠損症 (VSD), 心房中隔欠損症 (ASD), 動脈管開存症 (PDA) を合併したいわゆる triple shunts の3手術例を経験した. 3例とも乳児期早期から鬱血による呼吸不全および不全状態を示し, 2例では一期的根治術を, 手術時体重が1,700gの1例では動脈管結紮術を行った. 3つの短絡を術前に診断しえたのは1例だけで, 他の2例はVSDとPDAの診断が得られず, 術中に確認した. 予後は, 動脈管結紮だけを行った例を進行する心不全のため失ったが, 一時的手術を行った2症例では術後管理に難渋したものの良好な結果を得た. Triple shunts 症例に対し, 一期的手術が推奨されるが, 手術時体重が少ない例や, 他の合併奇形がある場合は, 二期的手術も考慮する必要があると思われた. また, 術前の臨床症状と, 診断との間に血行動態上の大差が推測される場合は, 術中に確認することが大切であると考えられた.
  • 山内 仁紫, 田中 茂夫, 二宮 淳一, 小泉 潔, 落 雅美, 寺田 功一, 原口 秀司, 本田 二郎, 杉本 忠彦, 庄司 佑
    1992 年 21 巻 6 号 p. 614-618
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心内膜線維弾性症と心内膜心筋線維症は, 特発性心筋疾患の類縁疾患に分類されるまれな疾患で, いずれも拘束性心筋障害から房室弁逆流が惹起され, これに対する外科治療の報告は未だ少ない. 今回, 乳児期に心不全症状にて発症し外科治療を必要とした2症例を経験した. 1例は高度僧帽弁逆流を認め, 大動脈縮窄症を合併した2歳1か月の心内膜線維弾性症の女児で, 僧帽弁形成術を行い, 術後しだいに圧較差増大した大動脈縮窄症に対し, バルーンカテーテルによる血管形成術を行った. 2例目は乳児期に心不全症状にて発症し高度僧帽弁逆流を認めた1歳9か月の心内膜心筋線維症の男児で, 僧帽弁形成術を行った. 術後それぞれ10年および1年を経過し, 良好な結果を得た. これらの疾患は, 乳児期前半に発症したもの, および弁不全例では予後不良とされているが, 早期の外科治療により, 心不全症状の軽快と原疾患進行の予防が得られると考える.
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