Abdominal apoplexy の1例を経験した. 症例は50歳の男性. 感染性心内膜炎に起因する弁膜症に対し1991年12月13日, 大動脈弁および僧帽弁の2弁置換術を施行した. 術後4日目に脾動脈瘤破裂と推測される後腹膜腔出血をきたしてショック状態に陥った. 術後28日目にも回腸へ分布する末梢小動脈の動脈瘤破裂と推測される消化管出血をきたし血圧低下をみた. このように外的誘因を伴わない腹部血管の破綻を abdominal apoplexy と呼ぶがその発生はまれである. われわれの症例は感染性心内膜炎に起因する細菌性動脈瘤の破裂がその原因と考えられた. 本症の診断には血管造影検査が有用であった.