1994 年 23 巻 3 号 p. 156-160
正常動脈壁と慢性閉塞動脈 (腸骨動脈) に Water Jet を空中・生食中で噴射してその標本を肉眼的, 組織学的に観察し, 血管形成術への応用の可能性を検討した. 正常動脈壁に空中で Water Jet を噴射すると, 噴射時間が長くなるほど重篤な壁損傷が認められ, 10秒間の噴射では中膜の弾性線維が断裂した. しかし, 生食中で噴射すると, 変化は内膜の表層が一部剥離するのみであった. 一方, 慢性閉塞動脈に空中で Water Jet を噴射すると, 血栓破壊効果は弱く, 60秒間の噴射でも, 不規則な小孔が血栓内に生じたのみであった. 生食中での噴射では血栓破壊効果は良好で, 40秒間の照射で長さ約2cmにわたってほとんどすべての血栓が除去でき, 内膜損傷も軽微であった. 以上より, Water Jet の生食中噴射によって, 安全でかつ効果的に慢性閉塞動脈中の血栓を破壊できることが判明し, Water Jet 血管形成術の臨床応用の可能性が示唆された.