日本心臓血管外科学会雑誌
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23 巻, 3 号
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  • 多施設共同臨床試験
    公文 啓二, 林 純一, 川島 康生, 江口 昭治, 高久 史麿
    1994 年 23 巻 3 号 p. 139-151
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心臓外科における術前自己血貯血時の貧血に対する遺伝子組換えヒトエリスロポエチン (rHuEPO) 皮下投与の効果を, 多施設共同臨床試験により検討した. 待機的開心術55例を対象とし, 手術予定日の2週および1週前にそれぞれ400gの自己血を採血貯血し, rHuEPOは手術3週前から200, 400もしくは600IU/kgを週1回, 計3回皮下投与し, 同時に経口鉄剤 (200mg) を連日投与した. 55例全例において目標の800gの貯血が可能であった. ヘモグロビン (Hb) 値はrHuEPO投与1週後, 200, 400および600IU/kg投与群でそれぞれ1.7, 2.8および2.1%増加し, その後, 自己血貯血とともに低下した. 手術直前には200IU/kg群では-4.2%と有意に低下したのに対し, 400および600IU/kg群では-0.8および0.7%と投与前値を維持した. 以上の結果, rHuEPOは心臓外科における術前自己血貯血時の貧血改善に対し有用であることが示された.
  • 益子 健男, 中野 雅道, 鈴木 和彦, 水野 朝敏, 坂本 吉正, 奥山 浩, 清水 昭吾, 黒澤 博身
    1994 年 23 巻 3 号 p. 152-155
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1974年7月より1993年2月までの間に行った258例の冠動脈バイパス術のうち, 他施設での初回手術例を含めた10例に11回の再手術を行った. 初回手術例との比較では年齢が高いこと, LVEFが劣る点で有意差が認められた. 初回手術からの期間は1年以内と10年目前後が多く, その原因としては早期では技術的問題によるグラフト不全があげられ, 晩期では経年変化によるグラフト不全に加え, 冠動脈病変の進行が認められた. 手術成績は手術死亡2例, IABP使用5例, 止血再開胸3例, 縦隔炎3例と満足できるものではなかった. とくに, 死亡例については術後の心電図変化より開存静脈グラフト領域の梗塞所見を認め, 動脈硬化性変化をきたした静脈グラフトのアテローム性内膜の遊離の関与が強く疑われた. 再手術に際しては diffuse な狭窄病変を有する開存静脈グラフトが存在する場合には結紮などの処置をすべきである. また合併症を最小限に食い止める点からも左開胸は再手術において有用なアプローチ法である.
  • 加藤 淳也, 岩崎 甫, 鈴木 章司, 保坂 茂, 神谷 喜八郎, 多田 祐輔
    1994 年 23 巻 3 号 p. 156-160
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    正常動脈壁と慢性閉塞動脈 (腸骨動脈) に Water Jet を空中・生食中で噴射してその標本を肉眼的, 組織学的に観察し, 血管形成術への応用の可能性を検討した. 正常動脈壁に空中で Water Jet を噴射すると, 噴射時間が長くなるほど重篤な壁損傷が認められ, 10秒間の噴射では中膜の弾性線維が断裂した. しかし, 生食中で噴射すると, 変化は内膜の表層が一部剥離するのみであった. 一方, 慢性閉塞動脈に空中で Water Jet を噴射すると, 血栓破壊効果は弱く, 60秒間の噴射でも, 不規則な小孔が血栓内に生じたのみであった. 生食中での噴射では血栓破壊効果は良好で, 40秒間の照射で長さ約2cmにわたってほとんどすべての血栓が除去でき, 内膜損傷も軽微であった. 以上より, Water Jet の生食中噴射によって, 安全でかつ効果的に慢性閉塞動脈中の血栓を破壊できることが判明し, Water Jet 血管形成術の臨床応用の可能性が示唆された.
  • 高橋 賢二, 長尾 好治, 成田 敦志, 岩渕 知
    1994 年 23 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当科ではCABG手術に際し可能な限り動脈グラフトを用いて手術を行う方針であるが, 今回1988年10月より1992年8月までの約4年間における動脈グラフトのみを用いてCABG手術を行った96症例につき検討を加えた. 男女比は64:32で平均年齢は63.2歳である. 内訳は1枝バイパス56症例で, 56枝に56本のグラフトを, 2枝バイパスは18例で36枝に34本のグラフトを, 3枝バイパスは16例で48枝に42本のグラフトを, 4枝バイパスは6例で24枝に16本の動脈グラフトを用いた. 96症例に採取した148本の動脈グラフトはすべて使用可能であった. RITAは41本を43枝に, LITAは68本を72枝に, RGEAは39本を49枝に使用した. 手術死亡は2例 (2.0%) であった. 術後グラフト造影を行った135本, 146枝のうち, 133本 (98.6%), 142枝 (91.3%) が開存していた. 内訳はITA100本中98本 (98.0%), 105枝中102枝 (97.1%) の開存率で, RGEAは35本中35本 (100%), 41枝中40枝(97.6%) と良好な開存率であった.
  • 術後合併症と遠隔予後よりみた危険因子の検討
    森山 由紀則, 豊平 均, 橋口 雅彦, 西元寺 秀明, 下川 新二, 平 明
    1994 年 23 巻 3 号 p. 167-171
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1982年より1992年7月までに教室で経験した腹部大動脈瘤待機手術103例の手術成績, 術後合併症と遠隔予後を検討した. 対象は男性83例, 女性20例で, 平均年齢は69歳であった. 手術死は2例 (1.9%) で, 術後合併症は男性例に多く (p<0.01), 非合併症例と比較し手術時間 (283 vs 225分), 動脈瘤サイズ (64 vs 54mm), 術中出血量 (2,192 vs 1,188ml), 術前肺機能 (%VC: 91 vs 100%), 血小板数 (17.4 vs 19.9万/cc) に有意差 (p<0.05) を認めた. 術後追跡しえた96例中, 遠隔死亡を15例に認めた. 5年生存率は全体で76%であった. 耐術例の遠隔成績には手術時年齢 (75歳未満と以上) と腎機能障害の有無がそれぞれp=0.004, p=0.014で有意に関連していた. 腹部大動脈瘤待機手術例の成績は良好で, 術後合併症からみて年齢は危険因子ではない. ただし, 手術時間, 出血量は術後合併症と有意の関連を有することから, 成績向上には手術手技のより一層の向上が必要である. また, 遠隔成績よりみて虚血性心疾患と腎機能障害合併例には慎重な経過観察が必要である.
  • 僧帽弁手術と心房細動の一期的治療
    山内 茂生, 浅野 哲雄, 原田 厚, 池下 正敏, 田中 茂夫, 庄司 佑
    1994 年 23 巻 3 号 p. 172-178
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心房細動を呈する僧帽弁膜症患者3名に対して弁置換術および弁形成術を行い, 同時に術中実施した心房 mapping の解析結果をもとに心房切開を置き, 心房細動の外科治療を同時に行った. 圧および容量負荷の加わった左心房で2名に興奮回旋による reentry 回路を認め, 1名に異所性自動能の亢進が証明された. なお, 右心房側の興奮伝播は混沌とした状態であった. Reentry の機序による心房細動患者1名に対しては両心房切開を他の1名に対しては左心房切開を置き, 異所性自動能の亢進による機序に対しては同定された部位に cryolesion を置きさらに術後の心房細動を防止する目的で左心房切開をこれに加えた. 術後一名で一過性の心房細動が認められたが, 心房切開により心房細動の持続が困難となり, 洞調律を長期間維持するのに有効であると考えられた.
  • 土田 弘毅, 橋本 明政, 青見 茂之, 平山 統一, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    1994 年 23 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    胸骨正中切開と左側開胸による上行・弓部から胸部下行大動脈にかけての拡大グラフト置換術を行った5症例を報告した. このうち4例では術中大量肺出血を発生し術後急性期に死亡した. 3例における肺の病理学的検討では両側肺に広範囲に肺胞内出血, 肺間質の浮腫と出血が認められ, とくに肺門部に強く一部の症例では肺門部壊死を伴っていたが, 肺の癒着剥離部位である左肺の末梢表面の出血は軽度であった. 肺出血がおこる原因として最も重要なことは全身ヘパリン化体外循環を側開胸で長時間 (240分以上) 行っていることが考えられ, 他の因子として左右分離換気をしないこと, 術中心不全に伴う肺うっ血, 肺水腫, 手術操作圧排による肺の機械的損傷などが考えられた. 胸部大動脈の拡大グラフト置換術施行時の肺出血予防のためには3, 4時間以内に体外循環が終了するような手術手技, 補助手段を選択すべきであるとわれわれは考える.
  • 手術成績に関連の因子と遠隔予後の検討
    森山 由紀則, 豊平 均, 西元寺 秀明, 下川 新二, 橋口 雅彦, 平 明
    1994 年 23 巻 3 号 p. 186-190
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1982年より1992年7月までに教室で経験した腹部大動脈瘤136症例のうち, 破裂例に対する緊急手術は26例で男女比は18:8, 平均年齢は71歳であった. 手術死亡率は58%と, 同時期に施行した待機手術例 (1.8%) と比較するときわめて不良であった. 破裂例の手術成績に関連の因子として, 年齢, 性別, 発症より手術までの時間, Ht, 手術および大動脈遮断時間を検討したところ生存 (A), 死亡 (D) の2群間に差はなかった. しかし, 来院時の血圧 (BP), 代謝性アシドーシス (pH), 動脈瘤のサイズはA, Dの2群でおのおの平均113:67mmHg, 7.33:7.15および57:80mmと有意差 (p<0.05) を認めた. 輸血量に有意差はなかったが, A, D群でおのおの3,380, 6,576mlとD群で約2倍であった. また, BPと輸血量とはr=0.574と有意の (p<0.01) 相関を認めた. とくに, BP<90mmHg, 輸血量7,000ml以上の症例はきわめて高い死亡率を示した. 耐術例の予後は良好で, 全例が発症前の生活レベルに復帰し, Kaplan-Meier 法による5年生存率は77%と待機手術例 (67%) に匹敵する成績を示した. 破裂性腹部大動脈瘤の手術成績を左右する最大の因子は shock で, 救命率向上のためには何よりも迅速な診断と治療が望まれる.
  • IABP離脱可能症例とその限界について
    平野 顕夫, 久冨 光一, 田山 栄基, 大橋 昌敬, 磯村 正, 小須賀 健一, 大石 喜六
    1994 年 23 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    人工弁置換術施行例において, 体外循環離脱時, および術後補助循環として intra-aortic balloon pumping (IABP) を施行した症例について, 適応および, 限界について検討を行った. その結果, 長期間心不全を有する心臓弁膜症に対する人工弁置換術後の急性左心不全に対するIABPの効果は, 術中, 術後の冠不全に起因する術後-過性の心機能低下症例に対しては有効かつ適切な補助循環であった. しかし, 心内操作の不備や不十分な心筋保護のために長時間の体外循環を余儀なくされた症例, また, 術前の右心不全が術後も遷延する症例では限界があり, これらの症例に対しては, むしろ左心バイパスおよび, 両心バイパス等の高度な補助循環が必要であると考えられた.
  • 鎌田 典彦, 山田 知行, 中本 進, 青嶋 實, 安藤 史隆
    1994 年 23 巻 3 号 p. 196-199
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Cell saver 装置を導入した1989年から1992年までの非破裂性腹部大動脈瘤30例 (輸血群13例, 無輸血群17例) を対象にして無輸血手術に関し検討を加えた. 手術死亡はなく無輸血手術率は57%であった. 6例 (20%) で回収式自己血輸血を行い, 3例で無輸血手術に有効であった. 輸血群と無輸血群において術前ヘモグロビン量, 術前ヘマトクリット値, 瘤最大径, 出血量で有意差 (p<0.05) を認めた. 積極的な回収式自己血輸血の併用で無輸血手術率の向上が可能であると考えられた.
  • 福田 幸人, 須磨 久善, 西見 優, 堀井 泰浩, 木川 幾太郎, 寺田 康, 鰐渕 康彦
    1994 年 23 巻 3 号 p. 200-204
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    上行大動脈石灰化症例への冠動脈バイパスの中枢神経系合併症予防のため, われわれは(1)遠位上行および弓部大動脈または大腿動脈送血, (2)可能な限り in situ 動脈グラフト, (3)末梢吻合は大動脈非遮断で心室細動下に行う, (4)静脈グラフトの中枢吻合は動脈グラフトか循環遮断で大動脈に行っている. 348例中14例にこの手技を用いた. 使用グラフトは左内胸動脈12本, 右内胸動脈6本, 右胃大網動脈8本, 静脈グラフト4本で in situ 動脈グラフトのみを使用した症例が10例で4例は free の動脈グラフトと静脈グラフトを composite として用いた. 同時期に行った通常のCABGと比較し手術時間, 心筋保護等に差はなく, また中枢神経系合併症は1例もなく, 本手技は有効な方法であると考える.
  • 伊藤 伊一郎, 阿部 邦彦, 椎名 祥隆, 千葉 覚, 川副 浩平, 新津 勝宏
    1994 年 23 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞後の乳頭筋断裂2例に対して, 僧帽弁閉鎖不全発生の早期に手術を行い救命できた. 症例1は75歳の女性で, 心筋梗塞発症後26日, 僧帽弁閉鎖不全発生2日目に手術を施行した. 後乳頭筋の部分断裂で後交連側前尖は高度に逸脱しており機械弁(SJM 25mm)で置換した. 症例2は76歳の女性で, 心筋梗塞発症後10日, 僧帽弁閉鎖不全発生4日目に手術を行った. 後乳頭筋の完全断裂で後交連側の前尖および後尖に高度逸脱があり, 後尖を一部温存し機械弁 (Omnicarbon 25mm) で置換した. 2例とも術前よりカテコラミンとIABP補助を必要とする心原性ショック状態であったが, ともに術後経過は順調であった. 本症の心原性ショック例では早期手術が有効であり, 診断つき次第手術を行うべきである.
  • 林 載鳳, 川上 恭司
    1994 年 23 巻 3 号 p. 209-211
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性. 背部痛にて発症し, 諸検査にて DeBakey IIIb型解離性大動脈瘤と診断された. 右腎動脈が偽腔から分岐し, 右腸骨動脈と左腎動脈の血流障害を伴っていた. 偽腔分枝救済のため, まず腎上部での intimal flap 切離術+腎下部腹部大動脈Yグラフト置換術を施行した. ついで2期的に胸部下行大動脈を人工血管に置換した. この方法により, 偽腔の血栓性閉塞を図ると同時に, 偽腔分枝への血流を保持するという相反する条件をともに満たすことができたので症例報告した.
  • 乾 清重, 折田 博之, 内田 徹郎, 塩野 知志, 鷲尾 正彦, 島貫 隆夫, 中村 千春
    1994 年 23 巻 3 号 p. 212-216
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性大動脈弁閉鎖不全による心不全を発症した不全型 Marfan 症候群合併大動脈炎症候群の25歳女性に対し準緊急的に Cabrol 手術を行い良好な結果を得た. 遺伝歴, 眼病変を認めなかったが, 筋骨格系異常および annulo aortic ectasia (AAE)不全型 Marfan 症候群が疑われた. しかし大動脈基部は不整形を示し, 大動脈炎に伴う大動脈弁閉鎖不全, 大動脈拡張も疑われた. 病理学的には, 大動脈内膜肥厚, 中膜弾性線維の断裂消失・嚢胞形成, 外膜栄養血管の内膜肥厚, 皮膚弾性線維の断裂消失が認められ, 結合織疾患に大動脈炎症候群を合併した病態が示唆された. 両者を合併したものはきわめて珍しく, 手術術式の考察と併せて報告する.
  • 柴田 利彦, 山田 正, 石原 寛治, 鈴木 範男, 永来 正隆, 藤井 弘一, 末広 茂文, 佐々木 康之, 上田 真喜子
    1994 年 23 巻 3 号 p. 217-220
    発行日: 1994/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Systemic lupus erythematosus (SLE) に合併する血管病変は主に細小動脈の閉塞性病変とされており, 大血管に拡張性病変を合併することは希である. 今回SLEに合併した若年者腹部大動脈瘤を経験したので報告する. 病理所見では大動脈 vasa vasorum の増生・内膜肥厚と炎症性細胞浸潤を認め, 動脈硬化性の動脈瘤とは異なる像を呈していた. 本症例の腹部大動脈瘤は vasa vasorum の増生・内腔狭窄に起因して生じた可能性が示唆された.
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