日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
破裂性腹部大動脈瘤症例の検討
手術成績に関連の因子と遠隔予後の検討
森山 由紀則豊平 均西元寺 秀明下川 新二橋口 雅彦平 明
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 23 巻 3 号 p. 186-190

詳細
抄録

1982年より1992年7月までに教室で経験した腹部大動脈瘤136症例のうち, 破裂例に対する緊急手術は26例で男女比は18:8, 平均年齢は71歳であった. 手術死亡率は58%と, 同時期に施行した待機手術例 (1.8%) と比較するときわめて不良であった. 破裂例の手術成績に関連の因子として, 年齢, 性別, 発症より手術までの時間, Ht, 手術および大動脈遮断時間を検討したところ生存 (A), 死亡 (D) の2群間に差はなかった. しかし, 来院時の血圧 (BP), 代謝性アシドーシス (pH), 動脈瘤のサイズはA, Dの2群でおのおの平均113:67mmHg, 7.33:7.15および57:80mmと有意差 (p<0.05) を認めた. 輸血量に有意差はなかったが, A, D群でおのおの3,380, 6,576mlとD群で約2倍であった. また, BPと輸血量とはr=0.574と有意の (p<0.01) 相関を認めた. とくに, BP<90mmHg, 輸血量7,000ml以上の症例はきわめて高い死亡率を示した. 耐術例の予後は良好で, 全例が発症前の生活レベルに復帰し, Kaplan-Meier 法による5年生存率は77%と待機手術例 (67%) に匹敵する成績を示した. 破裂性腹部大動脈瘤の手術成績を左右する最大の因子は shock で, 救命率向上のためには何よりも迅速な診断と治療が望まれる.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top