日本心臓血管外科学会雑誌
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胸部大動脈拡大グラフト置換術後に発生した致死的肺出血例の検討
土田 弘毅橋本 明政青見 茂之平山 統一遠藤 真弘小柳 仁
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1994 年 23 巻 3 号 p. 179-185

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抄録

胸骨正中切開と左側開胸による上行・弓部から胸部下行大動脈にかけての拡大グラフト置換術を行った5症例を報告した. このうち4例では術中大量肺出血を発生し術後急性期に死亡した. 3例における肺の病理学的検討では両側肺に広範囲に肺胞内出血, 肺間質の浮腫と出血が認められ, とくに肺門部に強く一部の症例では肺門部壊死を伴っていたが, 肺の癒着剥離部位である左肺の末梢表面の出血は軽度であった. 肺出血がおこる原因として最も重要なことは全身ヘパリン化体外循環を側開胸で長時間 (240分以上) 行っていることが考えられ, 他の因子として左右分離換気をしないこと, 術中心不全に伴う肺うっ血, 肺水腫, 手術操作圧排による肺の機械的損傷などが考えられた. 胸部大動脈の拡大グラフト置換術施行時の肺出血予防のためには3, 4時間以内に体外循環が終了するような手術手技, 補助手段を選択すべきであるとわれわれは考える.

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