抄録
虚血性心疾患と末梢血管病変とくに大動脈腸骨動脈閉塞症 (aortoiliac occlusive disease: 以下AIOD) の合併例では, 冠血行再建術 (以下, CABG) に用いる内胸動脈 (以下, ITA) の虚血下肢への側副血行路としての役割や術後の呼吸器合併症などの問題が存在する. 今回われわれは, この点をふまえて術式, 治療方針の決定に関する考察を行った. 対象は, 1991年7月から1992年3月までのCABG87例のうちAIOD合併例6例(6.9%, 平均年齢58.7歳, 全例男性) であった. 手術内訳は, 下肢血行再建同時施行例4例, 二期的施行例2例であった. 全例で術後合併症を起こすことなく軽快し現在も経過観察中であるが, 狭心痛, 間欠性跛行などの症状はない. 心臓および下肢の血行再建が必要な場合, 周術期心筋梗塞を予防するためにも心臓を優先することを基本としたうえで, 下肢の血流確保に留意することが肝要と考えられた.