日本心臓血管外科学会雑誌
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末梢側両腔吻合法を用いたDeBakey IIIb型解離性大動脈瘤手術症例の検討
不破 誠行広瀬 一橋本 昌紀岩田 尚久保 清景石川 真荒川 博徳東 健一郎松本 興治
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1995 年 24 巻 5 号 p. 281-285

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抄録

過去3年間に当教室において胸部下行大動脈人工血管置換術を施行した DeBakey IIIb型解離性大動脈瘤症例のうち, 腹部大動脈の拡大がなく, 腎動脈が偽腔より灌流されている例や真腔狭小例で, 末梢側真腔吻合では臓器虚血の可能性が強いと考えられた4症例に対し末梢側両腔吻合法を行った. 同時期に経過観察しえた偽腔灌流など認めず末梢側を真腔のみに吻合した4例をコントロール群として, 主に術後遠隔期の腹部残存偽腔の消長につき検討した. 対象群4例では術後平均17か月の観察期間で, 腹腔動脈レベルでの腹部大動脈最大径は軽度拡大が2例, 軽度縮小が2例であり, 腹部偽腔断面積は4例とも縮小していた. 術後第30病日での腎機能も術前に比し低下した症例はなかった. 本術式は偽腔灌流などを有する広範解離例に対して, 腹部重要臓器血流保持の観点から有用な術式であり, また腹部残存偽腔の拡大も認められなかった.

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