抄録
62歳, 男性に発症した右外腸骨動脈から内腸骨動脈にかけての孤立性動脈瘤の一手術例を経験した. 15年来の Behçet 病の既往を有し, 動脈瘤発生の原因と考えられた. Behçet 病の活動性について術前に詳細な検討を行い, 安全に手術を施行できた. 手術は人工血管を用いた解剖学的血行再建術を行った. 本邦では, Behçet 病のうち血管性の副症状を60歳台で発症するのは5%と報告されており, 自験例は比較的稀なケースと考えられる. Behçet 病は慢性反復性の経過をとり, 吻合部仮性動脈瘤の発生や動脈瘤の多発例がしばしば報告されていることから, 今後とも炎症反応の観察を行って再燃に十分注意するとともに, 定期的に画像診断による吻合部異常・異所性動脈瘤発生の有無を follow up する必要がある.