日本心臓血管外科学会雑誌
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心タンポナーデを初発症状とした原発性心臓血管肉腫の1手術例
古谷 保博濱本 正樹榊 雅之野村 文一井原 勝彦
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1999 年 28 巻 4 号 p. 278-281

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抄録

症例は50歳男性で, 労作時呼吸困難を主訴に入院した. 心臓超音波検査・CTで心タンポナーデおよび右房内腫瘤を認めた. 心嚢穿刺を行い多量の血性心嚢液を排液した. 精査の結果心臓悪性腫瘍が疑われ転移巣を認めなかったため, 24日後に手術を施行した. 体外循環下に右房壁を含めて腫瘍を全摘出し, 右房は馬心膜で再建した. 洞結節は切除せざるを得ずペースメーカー植え込み術も併せ行った. 病理組織診断は右房原発血管肉腫で, 切除断端はすべて陽性であったため, 術後放射線療法を計50Gy施行した. 術後14カ月を経過する現在, 再発, 転移を認めず元気に社会復帰している. 本疾患は非常に予後不良で, 平均余命は6カ月以内である. 遠隔転移が認められない場合には早期に腫瘍を摘出し, 不完全切除に終っても術後放射線療法が奏効すれば延命効果が期待できる.

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