抄録
解離性大動脈瘤 (DAA) に対するステントグラフト留置術後炎症反応が遷延化する症例が存在するので, その原因を検討した. 対象はDAA12例 (偽腔開存10例, ULP2例) で, 性別は男性11例, 女性1例, 平均年齢は60±9.8歳であった. ステントグラフト留置術後7日の大動脈造影で偽腔開存10例のうち endoleak なし7例 (A群), あり3例 (B群), ULP2例 (C群) は endoleak なし. (1)凝固系: FDP-E値はA群で術後1日に最高値となり, その後減少した. B群では術後7日まで緩やかに増加した. C群の増加は軽度であった. (2)WBCとCRPは術後3日で最高値となり, その後徐々に低下したが, A, B群では術後7日も依然高値であった. (3)胸部CT検査で下行大動脈周囲に水腫の所見を認め, 厚さが10mm以上存在した症例はA群で5/7例 (71%), B, C群には認めなかった. (4)左肺下葉に無気肺をA群で6/7例 (86%) に認めたが, B, C群には認めなかった. SG留置により術直後から偽腔内に大量の血栓形成を生じたA群で, 高頻度に胸部下行大動脈周囲の水腫と左肺下葉の無気肺を確認した. 血栓形成に伴い大動脈壁を中心に生じる炎症が水腫と無気肺を惹起し, 術後の炎症反応を遷延化する一因と考えられた.